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シェムリアップの新たな空の玄関口がオープン


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シェムリアップの新たな空の玄関口がオープン

 こんにちは。アジア・アライアンス・パートナーの柴田です。

 アンコール・ワットは、カンボジアが世界に誇るランドマークであり、世界遺産として登録されているアンコール遺跡群の中でも最も有名な遺跡です。日本に住んでいても学校の教科書や旅番組などで一度はアンコール・ワットを目にしたことがあるのではないでしょうか。

 2023年の10月に、このアンコールの名を冠した新たな空港が、カンボジアのシェムリアップにオープンしました。今回はこのシェムリアップの新国際空港、「シェムリアップ・アンコール国際空港」について紹介いたします。

シェムリアップ・アンコール国際空港

 2020年3月に中国政府系のアンコール・インターナショナル・エアポート・インベストメント・カンボジアが工事を開始し、2023年10月16日に開港しました。同空港の総敷地面積は約700ヘクタールで、北海道の新千歳空港とほぼ同じ大きさになります。中国企業3社が同空港の建設に出資しており、総工費は11億ドル(約1,600億円)に上るとされています。

 このシェムリアップ・アンコール国際空港が開設された目的の1つに、冒頭で述べたアンコール遺跡の保護があります。新空港の開業と同日に閉鎖されたシェムリアップ国際空港は、アンコール・ワットから西へ5km程と非常に遺跡から近い距離にありました。旧空港は2005年の国際ターミナル開業後、アンコール遺跡を訪れる観光客の増加に合わせて拡張を続けてきました。

 この空港から遺跡までの距離が近かったために、発着する旅客機の振動や騒音が遺跡へ悪影響を与えることが懸念され、大型機の発着など空港を運営していく上で様々な制限がかけられていました。

 新空港はシェムリアップ市内中心部から東へ約45kmのところに位置しており、大型機も発着が可能です。新空港の開港の記念式典でボンセイ・ビソット副首相は、今後のフライト数と乗客数の増加次第で空港の面積をさらに拡張する用意があるほか、「空港に隣接する1,000ヘクタールは経済特区として準備しており、地域一帯を空港都市へと変貌させる計画だ」と述べており、空港および周辺エリアの今後のさらなる開発が進みます。

 発着便数が増加することから、新空港の年間旅客取扱能力は2024年に700万人で、2040年には1,200万人への増加を見込んでおり、観光業界への追い風となることが期待されています。

開港早々に起こる不満

 エリアの開発など、将来的な発展が期待されている一方で、開港から数ヶ月のうちに、既に新空港に対する不満の声が上がっています。

 特に市内からのアクセスの悪さを指摘する声が多く、旧空港からは車で約20分で市内中心部で移動できていたのが、新空港からだとタクシーで約1時間。バスを使うと約1時間30分かかります。

 首都のプノンペンや隣国タイのバンコクへ移動する場合、空路を選択した場合、実際の飛行時間と空港への移動やチェックインにかかる時間を合計し、バスで移動した場合と比較すると、かかる時間はあまり変わらないため、航空運賃の高さを考えると、バスのほうがコストパフォーマンスが良い、という声も上がっているようです。

東南アジア各国が進める空港拡張

今回の記事では、昨年10月に開港したシェムリアップ・アンコール国際空港についてお伝えしましたが、それ以外の東南アジア各国でも空港の拡張を競うように進めています。

 カンボジアの他、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア、シンガポールでも各国の首都や近郊の空港の拡張計画が進行しており、旅客取扱能力について拡張前後の数を比較すると、2023年の拡張前が合計3億3600万人なのに対し、2030年には2倍近い6億5250万人までに拡大することが予想されています。

 カンボジアは、シェムリアップだけでなく首都のプノンペンでも、2025年の開業を目指し新国際空港の建設が進んでおり、総工費は15億ドル(約2250億円)で、旅客取扱能力は開港当初が1300万人、30年時点で3000万人を見込んでいます。

 またタイでは、バンコク近郊のスワンナプーム国際空港では、2023年に9月下旬サテライトターミナルが開業しており、最大28機が駐機可能で、年1500万人の旅客取扱能力があります。その他、今年2024年には3本目の滑走路の完成を予定しており、2030年までに2つ目のサテライトターミナルと滑走路1本が追加される計画です。その他に、ドンムアン空港と東部のウタパオ空港の拡張も進めるなど、精力的な投資を続けています。

 ベトナムの首都ハノイにあるノイバイ国際空港も拡張が進んでおり、2030年までに取り扱い能力を約2.4倍の6000万人に引き上げを目指しています。

 空港拡張により国として得られる恩恵は大きく、世界の主要都市とのアクセスが改善され、観光とビジネスの両面で旅客を呼び込めるほか、外資企業の新規進出なども期待ができます。空港建設に要する莫大な投資から生まれる大きな直接的経済効果も見込むことができます。

最後に

 シェムリアップの新空港は市内中心部へのアクセスや空港内の施設の充実などまだまだ課題が多く、さらに周辺地域も含めた大型開発計画もあるため、今後の動きを注視していく必要があります。

 また、カンボジアだけでなく、東南アジア全体として空港の拡充計画が進んでおり、近い将来に同エリアへの人の往来が増加することでさらなる活気につながることを期待しています。



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