VIETNAM INFORMATION
ベトナムのビジネス環境
2024年現在、ベトナムは東南アジアにおける主要な投資先としての地位を一層強くしています。ハノイ(北部)、ダナン(中部)、ホーチミン(南部)の3つの商工会議所は、日系企業のベトナム進出を強力にサポートする重要なネットワークとなっています。
日越関係は引き続き良好で、2015年に締結された「アジアの平和と繁栄のための広域な戦略的なパートナーシップ」は、2023年に「アジアと世界における平和と繁栄のための包括的戦略的パートナーシップ」に格上げすることが発表され、両国の協力関係をさらに深化させています。ベトナムの勤勉な国民性、豊富な労働力、資源・エネルギー、政治的安定性、優れた治安は、日系企業にとって依然として大きな魅力となっています。
日本のODAは30年以上にわたりベトナムの発展を支援しており、2024年も引き続き重要な役割を果たしています。特に、デジタル化、グリーン成長、防災、医療システムの強化など、新たな課題に対応するプロジェクトが増加しています。
「チャイナ・プラスワン」の動きは2024年も継続しており、ベトナムはその主要な受け皿となっています。特に、ハイテク産業や再生可能エネルギー分野での投資が増加しています。電力インフラも大幅に改善され、安定した電力供給が実現していることから、ベトナムは製造業のハブとしての地位を強化しています。
消費市場は引き続き拡大を続け、2024年の小売売上高の成長率は12%に達しています。特に、eコマースやフィンテックなどのデジタル経済分野が急成長しており、新たなビジネスチャンスを生み出しています。中間所得層の増加により、高品質な商品やサービスに対する需要が高まっています。
一方で、2024年のベトナムは新たな課題にも直面しています。急速な経済成長に伴う環境問題や都市化の課題、デジタル人材の不足、サイバーセキュリティの脆弱性などが顕在化しています。また、米中対立の影響や地域の地政学的リスクへの対応も求められています。
法制度の透明性向上や行政手続きの簡素化は進展していますが、さらなる改善が期待されています。また、産業構造の高度化も進んでおり、単純な労働集約型産業から、より付加価値の高い産業への移行が加速しています。
2024年のベトナムは、ASEAN域内での経済統合の深化や、複数の自由貿易協定の効果により、地域のサプライチェーンにおける重要性をさらに増しており、日系企業にとっては、製造拠点としてだけでなく、R&Dセンターやイノベーションハブとしての魅力も高まっています。
総じて、2024年のベトナムのビジネス環境は、課題を抱えながらも着実に改善を続けており、経済成長の勢いは依然として強いと評価されています。日本企業にとっては、これらの変化に適応しつつ、ベトナムの持続可能な発展に貢献していくことが求められています。
ベトナムの基本
ベトナムはインドシナ半島東側に位置し、中国、ラオス、カンボジアと国境を接する国です。国土面積は約33万平方キロメートルで、日本から九州を除いた広さに相当します。人口は急速に増加を続け、2024年には1億人を突破し、経済成長と都市化の加速を後押ししています。
ベトナムは54の民族からなる多民族国家であり、主要民族のキン族が全人口の約86%を占め、残りの14%に53の少数民族が含まれます。多くの少数民族は北部や中部の山岳地帯に居住しており、政府は彼らの文化保護と経済発展の両立に注力しています。少数民族の伝統文化を活かしたエコツーリズムなどを通じて地域振興が推進されています。
地理的に南北に細長い国土は、北部(ハノイ等)、中部(ダナン等)、南部(ホーチミン等)の3つの主要地域に分けられます。各地域の特性として、北部は政治と伝統文化の中心、中部は観光と新興産業の拠点、南部は経済と国際ビジネスのハブとしての役割を強めています。地域による性格の違いは存在していますが、急速な都市化と情報技術の発達により、地域間の文化交流が活発化しています。
ベトナム語の地域差も継続していますが、メディアやインターネットの普及により、標準語(ハノイ方言をベース)の使用が全国的に広がっています。同時に、地域の言語的多様性を保護する動きも見られ、地方の方言や少数民族の言語教育にも力が入れられています。
観光業は2024年のベトナム経済の重要な柱となっています。都市部ではインフラ整備が進み、交通機関も充実しています。一方で、地方には豊かな自然が残されており、北部の山岳地帯では快適な気候と伝統文化、中部や南部の沿岸部では美しいビーチが多くの外国人観光客を魅了しています。持続可能な観光開発が進められ、環境保護と経済発展の両立が図られています。
ベトナムは東南アジアの主要国としての地位を確立し、経済、文化、観光の面で国際的な注目を集めています。多様性と統一性のバランスを取りながら、独自の発展モデルを築いているのが現在のベトナムの特徴であり、これからも国内外からの投資や観光がさらに増加すると期待されています。
基本情報
国・地域名 | ベトナム社会主義共和国 Socialist Republic of Viet Nam |
面積 | 33万1,690平方キロメートル(日本の0.88倍) |
人口 | 9,851万人(2021年、出所:ベトナム統計総局(GSO)) |
首都 | ハノイ 人口 825万人(2020年、出所:ベトナム統計年鑑2020) |
民族 | キン族(越人)約86%、他に53の少数民族 |
言語 | ベトナム語、ほかに少数民族語 |
宗教 | 仏教(約80%)、そのほかにカトリック、カオダイ教、ホアハオ教など |
日本との時差 | -2時間 |
ベトナムの政治
ベトナムは、世界でも数少ない社会主義体制を採る国の一つです。1976年にベトナム社会主義共和国が成立して以来、共産党の一党独裁体制が続いており、その最高位に位置するのは共産党書記長です。この共産党は、憲法により「国家と社会の指導勢力」として唯一の政党と規定されており、国家の最高意思決定機関として大きな影響力を持っています。党員は約500万人で、国家機関や大衆組織の幹部は共産党員が独占しているため、党の影響力は極めて大きいです。
ベトナムの最高職位には、共産党中央委員会書記長、国家主席(大統領)、首相、国会議長の4つがあり、「四柱」と呼ばれています。四柱の中でも最高位は共産党書記長であり、続いて国家主席、首相、国会議長の順で権力が配置されています。
ベトナムの政治体制は社会主義国家としての特性を持ちながらも、権力を分散させる指向が強く、四柱による集団指導体制によって安定した政治運営が保たれています。
政治安定性は、外部からの評価では疑問視されることもありますが、国内では独裁者を好まず、権力の集中を避ける文化が根付いています。このような集団指導体制が、政治の安定と持続可能な発展を支える要因となっています。政府は、経済発展と国際関係の強化にも力を入れており、内外の投資家からの信頼を得るために努めています。これにより、ベトナムは東南アジア地域において安定した政治環境と経済成長を続ける国として注目されています。
政治体制
政体 | 社会主義共和国 |
元首 | グエン・スアン・フック国家主席 |
議会制度 | 一院制 一党(ベトナム共産党、書記長:グエン・フー・チョン) |
行政府 | 外務省、内務省、財務省、国防省など、18省ほか ファム・ミン・チン首相(2021年4月~) |
ベトナムの経済
2024年現在、ベトナムは世界的に見ても目覚ましい経済成長を遂げています。その背景には、1986年に始まった「ドイモイ(刷新)政策」が大きく寄与しています。このドイモイ政策は、以下の4点を柱とした政策でした。
①資本主義経済の導入
②国際社会への協調
③国民の生活に必要な産業への投資
④社会主義政策の緩和
資本主義経済の導入により、ベトナム国民は働けば働くほど豊かな生活を送ることができるようになり、私企業や私有財産の保有も可能となりました。これにより、国民のお金に対する価値観は一変しました。また、社会主義政策の緩和により、1967年の発足以降長らく未加盟だったASEANにも1995年に加盟しました。
1990年代後半に起こったアジア通貨危機や2008年のリーマンショックによる世界的な不況の影響を受けましたが、ドイモイ政策に基づく経済政策により、比較的早期に回復しました。このドイモイ政策は現在でもベトナムの経済成長の主軸となっています。
近年の目覚ましい経済成長とGDP拡大の大きな要因となっているのは、工業化の進展です。この工業化の進展に伴う外資系企業の集積により、輸出額が拡大しています。製造業の集積はインフラ投資や雇用創出を促進するため、経済効果が大きいとされています。実際にベトナムの供給項目別実質GDP成長率を見ると、工業がその牽引役となっています。また、所得の向上に伴う内需の拡大により、サービス業も経済成長を支えています。その一方で、主要産業である農林水産業の産業別GDP構成比における割合は縮小傾向にあります。
しかし、2023年後半から2024年にかけては、世界的なインフレや景気減速の影響を受け、ベトナム経済の成長は鈍化しています。特に輸出の伸び悩みや内需の停滞が懸念されています。それでもベトナム政府は2024年のGDP成長率目標を6.0~6.5%に設定しており、経済の回復を目指しています。
政府は経済の多角化を進め、製造業やサービス業の発展を促進しています。また、インフラ整備や教育への投資を続けることで、長期的な経済成長の基盤を強化しています。これにより、ベトナムは引き続き東南アジア地域において重要な経済拠点となり、今後も堅調な成長が期待されています。
経済
•基本的経済指標 | 項目 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | データ出所 |
名目GDP(十億ドル) | 277.071 | 303.091 | 327.873 | 342.941 | 366.201 | IMF | |
一人当たりの 名目GDP(ドル) | 2957.899 | 3201.868 | 3398.214 | 3514.365 | 3717.8 | IMF | |
GDP成長率 | 6.9% | 7.2% | 7.2% | 2.9% | 2.6% | IMF | |
失業率(平均) | 2.2% | 2.2% | 2.2% | 2.5% | 2.7% | IMF | |
輸出額 | 214,019 (百万ドル) | 243,483 (百万ドル) | 264,267 (百万ドル) | 282,629 (百万ドル) | 336,167 (百万ドル) | ベトナム統計総局 | |
対日輸出額 | 16,841 (百万ドル) | 18,851 (百万ドル) | 20,334 (百万ドル) | 19,268 (百万ドル) | 20,108 (百万ドル) | IMF | |
輸入額 | 211,104 (百万ドル) | 236,688 (百万ドル) | 253,393 (百万ドル) | 262,691 (百万ドル) | 332,843 (百万ドル) | ベトナム統計総局 | |
対日輸入額 | 16,592 (百万ドル) | 19,011 (百万ドル) | 19,540 (百万ドル) | 20,345 (百万ドル) | 22,565 (百万ドル) | IMF | |
•主要貿易品目 | 輸出:繊維・縫製品、携帯電話・同部品、PC・電子機器・同部品、履物、機械設備・同部品等 輸入:機械設備・同部品、PC・電子機器・同部品、繊維・縫製品、鉄鋼、携帯電話・同部品等 | - | |||||
•主要貿易相手国 | 輸出:1.米国(27.3%) 2.中国(17.3%) 3.日本(6.8%) 輸入:1.中国(32.0%) 2.韓国(17.9%) 3.日本(7.7%) (2020年) | ベトナム統計総局 | |||||
•外国からの直接投資 (単位:百万ドル) | 1位:シンガポール 7,886(24.8%)2位:韓国 7,002(22.1%)3位:日本 4,075(12.8%)4位:オランダ 3,393(10.7%)5位:中国 2,790(8.8%) (ベトナム外国投資庁 新規・拡張、認可ベース 2021年) | ベトナム外国投資庁 | |||||
•通貨 | ドン(Dong) | - | |||||
•為替レート | 1ドル=23,160ドン(VND)(2021年平均値) | - | |||||
•日系企業数 | 1,973社(2022年5月、ベトナム日本商工会議所・ホーチミン日本商工会議所・ダナン日本商工会議所登録会員数の合計) | - | |||||
•在留邦人 | 22,185人(2021年10月外務省「海外在留邦人数調査統計」より) | - |