VIETNAM INFORMATION
ベトナムのビジネス環境
日本とベトナムは2015年に「アジアの平和と繁栄のための広域な戦略的なパートナーシップ」を結ぶなど関係強化の方向にあり、日越関係は非常に良好であると言えます。ベトナムの勤勉な国民性、豊富な労働力及び資源・エネルギーに加え、政治的安定性や治安の良さもあり、ますます多くの日系企業がベトナムに進出しています。日本によるベトナムへのODAは1992年に開始され、同国の人材育成や制度・政策改善、交通や電力等のインフラ整備等、多岐に渉支援を提供してきました。過去の支援実績を見ても、日本は対ベトナムのドナーとして、長年第1位の支援額を提供しており、今後も継続した経済支援が望まれています。
近年では、中国の人件費の高騰や人材不足、米中対立の激化を受けて、中国以外の国・地域に拠点を分散する「チャイナ・プラスワン」を検討する企業が世界的に増えています。この中国に代わる生産移管先として、ベトナムは大きな注目を集めています。特に人口が1億人に迫っているベトナムでは、安価な労働力が豊富であり、投資環境も比較的良好であることが大きな魅力となっています。また、ベトナム進出にあたり長く懸念点とされてきた電力インフラの改善も進んでいることから、外資系製造業の進出先としてより一層の注目を集めています。2020年に世界的な新型コロナの感染拡大の影響により世界各国で経済が停滞する中、ベトナムはGDP成長率がマイナスに落ちることはなく、鉱工業・建設業を中心にプラス成長を続けおり、今後も更なる経済成長が期待されます。
産業構造の付加価値化や法政面の不透明さなどといった課題はまだまだありますが、ベトナム経済は当面は堅調に成長をしていくと見込まれています。
ベトナムの基本
べトナムはインドシナ半島の東側に位置しており、北に中国、西北にラオス、西南はカンボジアと国教を接しています。国土面積は約33万㎢で、日本の総面積から九州を除いたのと同程度の広さになります。ベトナムの総人口は、ベトナム戦争の影響により一時的な減少はあったものの、2019年時点で約9,621万人で年々増加傾向にあり、ベトナム政府は、2025年には1億人を突破すると見込んでいます。
あまり知られていませんがベトナムは54もの民族からなる多民族国家です。私たちがベトナムを訪れる際に接するベトナム人のほとんどが、マジョリティーである「キン族」と呼ばれる民族です。このキン族がベトナム全体の約86%を占めており、残りのわずか14%程の中にキン族を除く53の民族が存在しています。この53の少数民族の多くはベトナムの北部や中部域の山岳地帯に住んでいます。首都ハノイやホーチミンといった都市部に住ベトナム人の多くはキン族の人々です。
ベトナムの国土は南北に伸びており、エリアを北部(ハノイ等)・中部(ダナン等)・南部(ホーチミン等)の大きく3つに分けることができます。住むエリアによって、そこに住む人たちの性格も変わる言われており、南部に行くにつれて、おっとりした、温和な性格の方が増えるといわれています。
公用語であるベトナム語も日本語の方言と同様に、北部・中部・南部で方言や言葉のアクセントの付け方が異なります。なお、ベトナムにおける標準語は、首都ハノイの位置する北部の話し方で、教科書等も北部の話し方をベースに作成されています。
基本情報
国・地域名 | ベトナム社会主義共和国 Socialist Republic of Viet Nam |
面積 | 33万1,690平方キロメートル(日本の0.88倍) |
人口 | 9,851万人(2021年、出所:ベトナム統計総局(GSO)) |
首都 | ハノイ 人口 825万人(2020年、出所:ベトナム統計年鑑2020) |
民族 | キン族(越人)約86%、他に53の少数民族 |
言語 | ベトナム語、ほかに少数民族語 |
宗教 | 仏教(約80%)、そのほかにカトリック、カオダイ教、ホアハオ教など |
日本との時差 | -2時間 |
ベトナムの政治
ベトナムは、社会主義体制を採る世界5カ国のうちの1つです。1976年のベトナム社会主義共和国の成立以来、継続して共産党の一党独裁体制が敷かれており、その長である共産党書記長が国家権力の最高位に位置します。この共産党は憲法により「国家と社会の指導勢力」と規定されている唯一の政党であり、国の最高意思決定機関です。500万人ほどの党員を有し、国家機関や大衆組織の幹部は共産党員により独占されているため、党の持つ影響力は極めて大きいです。
国家の最高職位は、
①ベトナム共産党の最高職である党中央委員会書記長
②国家元首である国家主席(大統領)
③政府の長である首相
④立法府である国会の議長 であり、「四柱」と呼ばれています。
であり、「四柱」と呼ばれています。 四柱における最高位は、前述の通り、党書記長であり、続いて国家主席、首相、議長という権力構造になっています。
原則として、党と国のトップを同一人物が兼任することはなかったが、2018年10月に当時の国家主席チャン・ダイ・クアン氏が病死し、その後任に共産党の書記長であったグエン・フー・チョン氏が就いたため、共産党書記長が国家主席を兼任することとなり、この原則が崩れました。 この体制は、2021年4月に新たな国家主席としてグエン・スアン・フック首相、グエン氏の後任の首相として、ファム・ミン・チン共産党中央組織委員長が選出されるまで続きました。
社会主義国家ということで、政治の安定性が疑問視されますが、ことベトナムにおいては、独裁者を好まず、権力を分散させる指向が強く、四柱による集団指導体制によって、安定した政治運営が保たれています。
政治体制
政体 | 社会主義共和国 |
元首 | グエン・スアン・フック国家主席 |
議会制度 | 一院制 一党(ベトナム共産党、書記長:グエン・フー・チョン) |
行政府 | 外務省、内務省、財務省、国防省など、18省ほか ファム・ミン・チン首相(2021年4月~) |
ベトナムの経済
近年、世界的に見ても目覚ましい経済成長を遂げているベトナムですが、そのきっかけとなったのは、1986年から始まった「ドイモイ(刷新)政策」だと言えます。このドイモイ政策の具体的な内容は以下の4点です。 ①資本主義経済の導入 ②国際社会への協調 ③国民の生活に必要な産業への投資 ④社会主義政策の緩和
資本主義経済の導入により、ベトナム国民は働けば働くほど豊かな生活を送ることができ、私企業、私有財産も持てるようになったためベトナム国民のお金に対する価値観は一変しました。また、社会主義政策が緩和されたことにより、1967年の発足以降、長らく未加盟だったASEANへも、1995年にようやく加盟を果たしました。1990年代後半に起こったアジア通過危機や2009年のリーマンショックによる世界的な不況等がありましたが、ドイモイ政策に則った経済政策により、直接的な被害を免れています。このドイモイ政策は現在までベトナムの経済成長における主軸となっています。
また、近年の目覚ましい経済成長、GDP拡大の1つの要因となっているのが、工業化の進展です。この工業化の進展に伴う外資系企業の集積により、同国の輸出額は拡大しています。一般的に製造業の集積は、それに伴うインフラ投資や雇用創出を含む経済効果が大きいとされており、実際にベトナムの供給項目別実質GDP成長率を見ると、工業がその牽引役になっています。また、所得の向上に伴う内需拡大に伴い、サービス行も牽引役となっています。その一方で、引き続きベトナムの主要産業ではあるものの、農林水産業の産業別GDP構成比において占める割合は縮小傾向にあります。
経済
•基本的経済指標 | 項目 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | データ出所 |
名目GDP(十億ドル) | 277.071 | 303.091 | 327.873 | 342.941 | 366.201 | IMF | |
一人当たりの 名目GDP(ドル) | 2957.899 | 3201.868 | 3398.214 | 3514.365 | 3717.8 | IMF | |
GDP成長率 | 6.9% | 7.2% | 7.2% | 2.9% | 2.6% | IMF | |
失業率(平均) | 2.2% | 2.2% | 2.2% | 2.5% | 2.7% | IMF | |
輸出額 | 214,019 (百万ドル) | 243,483 (百万ドル) | 264,267 (百万ドル) | 282,629 (百万ドル) | 336,167 (百万ドル) | ベトナム統計総局 | |
対日輸出額 | 16,841 (百万ドル) | 18,851 (百万ドル) | 20,334 (百万ドル) | 19,268 (百万ドル) | 20,108 (百万ドル) | IMF | |
輸入額 | 211,104 (百万ドル) | 236,688 (百万ドル) | 253,393 (百万ドル) | 262,691 (百万ドル) | 332,843 (百万ドル) | ベトナム統計総局 | |
対日輸入額 | 16,592 (百万ドル) | 19,011 (百万ドル) | 19,540 (百万ドル) | 20,345 (百万ドル) | 22,565 (百万ドル) | IMF | |
•主要貿易品目 | 輸出:繊維・縫製品、携帯電話・同部品、PC・電子機器・同部品、履物、機械設備・同部品等 輸入:機械設備・同部品、PC・電子機器・同部品、繊維・縫製品、鉄鋼、携帯電話・同部品等 | - | |||||
•主要貿易相手国 | 輸出:1.米国(27.3%) 2.中国(17.3%) 3.日本(6.8%) 輸入:1.中国(32.0%) 2.韓国(17.9%) 3.日本(7.7%) (2020年) | ベトナム統計総局 | |||||
•外国からの直接投資 (単位:百万ドル) | 1位:シンガポール 7,886(24.8%)2位:韓国 7,002(22.1%)3位:日本 4,075(12.8%)4位:オランダ 3,393(10.7%)5位:中国 2,790(8.8%) (ベトナム外国投資庁 新規・拡張、認可ベース 2021年) | ベトナム外国投資庁 | |||||
•通貨 | ドン(Dong) | - | |||||
•為替レート | 1ドル=23,160ドン(VND)(2021年平均値) | - | |||||
•日系企業数 | 1,973社(2022年5月、ベトナム日本商工会議所・ホーチミン日本商工会議所・ダナン日本商工会議所登録会員数の合計) | - | |||||
•在留邦人 | 22,185人(2021年10月外務省「海外在留邦人数調査統計」より) | - |