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2024 年の激戦のタイ自動車市場


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2024 年の激戦のタイ自動車市場

こんにちは。島根・ビジネスサポートオ・フィスのタイ人スタッフ、グラフです。

 今年の 5 月から 6 月に渡り、タイの自動車製造業界では2つの大きいニュースがありました。スバルとスズキがタイでの四輪生産から撤退し、代わりに外国の生産拠点からの輸入車を販売することを発表したことです。これは、輸入関税なしで中国からの電気自動車がタイ市場に多く流入してきて、価格競争で負けることが大きな要因となっています。しかし、スバルとスズキは引き続きタイでの事業を続け、特定の顧客層に焦点を当てたマーケティング戦略と高クォリティーな製品を提供する予定です。

参考ニュース記事:スズキ タイ工場閉鎖し現地生産から撤退へ 小型車販売伸び悩み

 今回は、現在のタイ自動車市場の現状と変化する消費者行動、そして各プレーヤーの戦略についてお話ししたいと思います。

2024 年のタイ自動車市場の現状

 過去 2〜3 年間で、タイの自動車市場における競争は激化してきました。日本と中国のメーカーが価格とサービスで競い合い、先端技術の開発に注力しています。これらの動きは、COVID-19 の影響で需要が完全に回復していない中で消費者の関心を引きつけるためです。また、中国からの電気自動車(BEV)の急速な成長も影響しています。各メーカーがプロモーションや新モデルの発売を続けているにもかかわらず、タイの自動車市場全体は期待ほど活発ではありませんが、SUV と EV およびハイブリッド車は急速に成長している一方、従来の内燃機関車はゆっくりと回復しています。

タイ国内自動車販売および登録指数の推移表

タイ自動車市場の直面するリスク

 タイの自動車産業は、経済の脆弱性と消費者嗜好の変化という二重の圧力に直面しています。今後さらにリスクが増加する可能性も十分あります。過去 5 年間、タイの自動車産業は非常に激しい競争下に置かれてきました。2022 年以前は、内燃機関車(ICE 車)メーカーが新車を投入し、シェア獲得を目指していました。しかし現在、タイの消費者は SUV やEV、ハイブリッド車への関心を高めています。SUV は過去 10 年間で市場シェアを着実に拡大し、EV も急成長しています。

 そのため、自動車メーカーは顧客ニーズに合った製品開発に注力する必要があります。SUV や電気自動車、ハイブリッド車の開発が不可欠であり、対応できなければ、ブランドロイヤルティを失うリスクがあります。特に、日本メーカーは EV 市場への参入が遅れており、中国メーカーの成長に対抗することが課題となっています。日本車の市場シェアは、2019 年の 86%から 2023 年には 73%に減少しました。

 欧米メーカーは EV のラインアップは少ないものの、SUV の多彩な選択肢を武器にシェア獲得を目指しています。一方、中国メーカーは SUV と EV の両方で魅力的な製品を揃え、デザインと価格で消費者を引き付けています。その結果、日欧メーカーを上回る高成長を遂げています。

 しかし、日本車は品質と充実したアフターサービスへの信頼が強みです。特に、過酷な使用に耐える車が求められるタクシーや商用車の分野では、日本ブランドが根強い人気を誇ります。

タイのタクシーの定番車種はトヨタ・カローラアルティス

中国メーカーの驚異的な価格競争力

 タイの自動車メーカーは、競合の増加と市場トレンドの変化に対応するため、戦略の再構築を迫られていま
す。迅速な変化への適応と競争力強化のための事業計画が成長の鍵を握っています。しかし、高性能な製品
と際立つデザイン、価格競争力を持つ中国メーカーの存在は脅威です。日本メーカーやテスラですら、価格引
き下げを余儀なくされています。コストと価格で対抗できないメーカーは、スバルやスズキのように事業モデルの転
換を迫られるかもしれません。

2024 年 2 月に BYD・ATTO3 は通常価格から 15 万バーツ(約 60 万円)値下げされました。
出典:www.thansettakij.com/
2024 年 3 月にスズキ・シアズは通常価格から 15 万バーツ(約 60 万円)値下げされました。
出典:www.Headlightmag.com

結論

 タイの自動車市場は、長年市場を支配してきた日本車メーカーにとって正念場を迎えています。中国の EVによる挑戦は、日本車が品質とアフターサービスで得た信頼を維持しつつ、変化する消費者ニーズに対応することが一番課題でしょう。例えば、トヨタは、ASEAN 市場向けに開発したヤリス クロスで、最先端技術と燃費性能、デザイン、価格を高次元で両立させ、成功を収めています。これはダイハツとの共同開発によるコスト削減が奏功した好例です。

大人気の ASEAN 市場向けのトヨタ・ヤリスクロス
出典:Toyota (Thailand)

 今後もタイの自動車市場は激動が続くと予想されます。日本メーカーが生き残るためには、変化を先取りし、新たな価値を提供し続けることが重要です。技術力とブランド力、そしてパートナーシップを活かした柔軟な戦略が求められるでしょう。

参考:SCB EIC



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