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タイの高齢化市場


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タイの高齢化市場

 日本では2000年の介護保険制度スタート以降、様々な高齢者向けの製品やサービスが活用されています。タイに於いても例外ではなく、人口の高齢化が進み、大きな社会課題になってきています。保健省を中心として行政側でも様々な制度が構築され、高齢者施設などを中心とした民間投資も急激に拡大してきています。2023年5月22〜29 日に保健省が実施した調査でも、高齢者施設の充実が国民のニーズのうち22.7%とトップになっているとのことです。

 今回はタイの高齢者市場の概要と拡大している高齢者施設についてお伝えしたいと思います。
 

タイの高齢化の現状と未来

 2022年時点でタイの60歳以上の高齢者人口の割合は22.0%と、既に高齢化社会に突入しています。2050年には60歳以上の高齢者人口が38.3%に達すると予測されており、ASEANでシンガポールに次いで2番目に高い数値となっています。また、タイの出生率は1990年代に2%を切って以降も下落し続け、2020年から2023年の合計特殊出生率は1.54となっており、急速な少子高齢化がひっ迫した課題となっています。また、医療の発達により、60歳の平均余命が25.2歳と、タイの高齢者は60歳以降、さらに平均25年生きると想定されています。出生率の低下と60歳の平均寿命の延伸は、今後タイが、現在の日本と同様の道をたどると予測される要因です。またタイの人口は2028年をピークに減少が始まると予測されています。
 

日本タイ
60歳以上の高齢者人口の割合(2022)35.8%22.0%
60歳以上の高齢者人口の割合(2050)予測43.7%38.3%
合計特殊出生率(2023)1.39%1.54%
60歳の平均寿命(2022)26.9歳25.2歳

 2022年のタイの総人口は6,609万人でそのうち高齢者人口は1,270万人です。統計庁の調査による地域別の高齢者数は下記の通りです。
 

地域合計男性女性
東北部4,002,0101,713,9412,288,069
中央部3,486,6021,441,0572,045,545
北部2,757,6181,179,9291,577,689
南部1,545,115653,667891,448
バンコク1,343,711555,067788,644
合計13,135,0565,543,6617,591,395
※タイ保健省健康サービス推進局より提供

 

タイの高齢者施設の現状
 

 急速に進む高齢化に伴い、タイの高齢者施設市場は急速に拡大をしています。2020年タイ保健省健康サービス推進局(Department of Health Support)は、高齢者施設等に関する省令にて、高齢者施設の区分(①介護活動を行う宿泊を伴わない高齢者施設 ②宿泊を伴いリハビリを提供する施設 ③宿泊を伴いリハビリと介護活動を行う施設)を設け、同時に発布した安全及びサービスに関する省令で高齢者施設を安全に運営するための基準を定めました。

 同時に高齢者施設の管理者の試験及び能力評価の基準と介護士の教育制度も規定されました。この中で、管理者は130時間の教育を受け証明書を取得すること、介護士は420時間の研修コースを受講することと定められています。

 以上により、タイの高齢者施設も、関与する経営者・職員も、定めらたルールの下で高齢者支援をする仕組みが構築されたことになります。上記のルールの運用が始まり、高齢者施設は保健省健康サービス推進局の監査を受けた上で登録をすることが義務づけられ、2023年7月時点で708か所が登録を済ませています。

 地域別の老人ホームの数は以下の表の通りで、バンコクとその周辺に6割ほどが集中しています。高齢者人口が多い東北部や中央部はまだ施設が少ない状態であり、これらの地域の高齢者は自宅で過ごしていることが推測されます。まだ施設の稼働率が平均で8割近くと高いことが、供給が需要に追い付いていないことを示しています。
 

地域別の高齢者施設の施設数とベッド数

地域高齢者施設数ベッド数
東北部40741
北部981,287
東部561,118
バンコク及びその周辺42210,223
中央部14287
南部25298
西部531,252
合計70812,093
※タイ保健省健康サービス推進局から提供

 タイには日本の様な介護保険制度がないため。高齢者施設に掛かる費用は全額自己負担となります。バンコクを中心とした高齢者施設の月額入居料も10,000バーツ(42,000円)~100,000バーツ以上(420,000円以上)と非常に大きな差があります。施設数が多いバンコク及びその周辺の入居料の割合を下記の表にまとめてみました。

※1タイバーツ=4.2円で計算

クラス月額入居料施設数割合
Sクラス40,000B以上3918%
Aクラス30,000B以上40,000B未満2612%
Bクラス20,000B以上30,000B未満6429%
Cクラス20,000B未満9141%
※KAIGO Life Co., Ltd. から提供

 Bクラス・Cクラスの割合が多いですが、約3割が月額30,000Bを超えていることが示されています。日本の介護保険下の事業とは違い、施設やサービスの内容と質によって自由に価格を設定できるため、質の高いサービスを提供している施設もあることが分かります。
 

最後に

 日本を追うようにタイも高齢化が進んでおり、官民ともに高齢者ケアへの活動が非常に活発になっています。コロナ以前から高齢者支援の先進国である日本への興味は非常に高かったですが、コロナが明け、自由に渡航できるようになった昨年からその意識はさらに高まっています。

 今回は法整備がなされ、急拡大している高齢者施設の市場についてまとめました。各施設がターゲットとしている所得層に相応したサービスの充実を続けているため、日本の質の高い商品やサービスにもチャンスはあると考えます。また介護保険制度がないタイでは、日本では介護保険外の商品やサービスにもニーズがあるかもしれません。皆様の商品・サービスで高齢者市場に関連するものがありましたら是非一度タイでの展開をご検討ください。



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