こんにちは。アジア・アライアンス・パートナーのグラフです。
皆さんは「ペットヒューマニゼーション」という言葉を聞いたことはありますか?
新型コロナウイルスの感染拡大や高齢化社会の急進により、「ペットヒューマニゼーション」、日本語に直訳すると、ペットの「人間化」もしくは、「家族化」という言葉がタイだけではなく、国際的に流行し、ペットを家族の一員として、愛情をもって接することが当たり前の社会になっています。
タイの不動産デベロッパーは、このトレンドの中にビジネスチャンスを見出し、「ペットヒューマニゼーション」に対応する物件の開発を進めています。
本日は、このトレンドについて、また、不動産デベロッパー業界、業界関連企業にとってどのようなビジネスチャンスがあるかをお話したいと思います。
ペットヒューマニゼーションについて
「ペットヒューマニゼーション」とは、飼っているペットをただの「ペット」ではなく、自分の子供や家族の一員として、愛情をもって「人間」として接することを言います。ペットは自分の子供・家族の一員だ、という考えから、飼い主(親)は自分のペット(子供・家族)に時間やお金、愛情を注ぎます。
そのため、消耗品であるペットフードや、ペットホテルなどサービスまで、ペット関連のビジネス、いわゆる「ペットコノミー(ペット+エコノミー)」は世界中で毎年成長しています。
ペットヒューマニゼーションがタイで浸透してきた理由
マーケットリサーチ会社の「Euromonitor」の調査によると。2019年のタイで犬・猫を飼う家庭の数は、全国の家庭のうち34%ほどでしたが、コロナ後の2022年には37%まで増加しています。つまり、ペットを飼うタイ人の数が増えてきたということです。
その理由は以下の通りに考えられます。
1. 独身のタイ人が増えるにつれて、子供のいる家庭の数が減っているため
マヒドン大学経営大学院(CMMU)がペットを飼う1,046人に行った調査によると、調査対象のうち80.7%の対象者が独身、残りの19.3%は既婚、という結果になりました。
さらに、ペットを飼う目的の調査では、49%の方が「子供の代わり」と答えました。調査の結論として、タイではペットヒューマニゼーションが速いスピードで流行し、犬・猫のペット登録数が毎年増える一方で、2018年から2022年までの子供の出生率が減少しています。
2. 治療の一環のため・孤独を和らげるため
同調査によると、ペットを飼う目的として、18%の人が自分の生活のサポートや、ペットヒーリングと回答しています。ペットヒーリングは「幸せホルモン」と呼ばれる「オキシトシン」を20%ほど上げる効果があるとされています。その他、精神的ストレスを和らげたり、高血圧症のリスクを下げる効果もあります。タイでは高齢化社会に入り、孤独を和らげるためにペットを飼うという選択肢を取る、独身あるいは子供がいない高齢者が増えてきています。
ペット関連ビジネスの市場規模
マーケットリサーチ会社の「Euromonitor」の調査によると、2021年の世界のペット関連の商品・サービスの市場規模は433.72億ドル。そして、ペットフードビジネスの市場規模は1,102.68億ドルという結果になりました。
タイではペット関連の商品・サービスの市場規模は39.54億バーツで、ペットフードビジネスの市場規模は406.48億バーツという結果でした。
さらに、2026年までに、世界のペット関連総合ビジネスの市場規模は2,176.51億ドルまで成長すると予測されています。つまり、2021年から2026年までの成長率は7.2%ということです。一方タイでは、タイ商務省が発表したデータによると、2021年から毎年8.4%ほど成長し、2026年にはタイのペット関連総合ビジネスの市場規模が667.48億バーツまで成長すると予測しました。
タイの不動産デベロッパーとペットヒューマニゼーションのメガトレンド
ペットヒューマニゼーションのトレンドと共に大きな成長を見せるペット関連市場の中に、タイの不動産デベロッパーはビジネスチャンスを見出し、ペットと一緒に暮らしたい家庭をターゲットに、ペットフレンドリーのコンドミニアムや戸建住宅の開発を進めています。
ペットフレンドリーの物件の開発は通常の物件と異なり、ペットを飼う人とペットそのものの気持ちを理解し、物件、サービスを開発することが必要です。ペットによる家具や住宅への傷、損傷を防ぐために、傷が付きにくく、掃除しやすい素材を使わなければなりません。さらに、ペットが出す騒音が近所、周辺の住民に迷惑をかけないよう、各部屋の防音素材の使用や、24時間ペットをモニタリングできるカメラの設置、物件内のペット用のプレイグラウンドやペットホテルなどの施設も重要な条件になります。
タイのペットフレンドリーな不動産ディベロッパーの例
それでは、現在タイで積極的にペットフレンドリーな物件の開発を進めているディベロッパーをいくつかご紹介いたします。
Magnolia Quality Development Corporation Limited(MQDC)
MQDCはタイの有名なコンドミニアムディベロッパーの一つです。同社はペットヒューマニゼーションのトレンドに乗って、「Whizdom The Forestias – Petopia」という、人間とペットが共に安全で幸せな暮らしを送ることができる超高級なコンドミニアムを開発しています。人とペットが一緒に運動できる、一周150mのジョギングトラックやペットホテルがあり、ペットを愛する富裕層のタイ人だけではなく、外国人にも人気があります。
MAJOR DEVELOPMENT PUBLIC COMPANY LIMITED
MAJOR DEVELOPMENTは、ペットフレンドリー(自社の制度名:Major Petscape)なコンドミニアムのディベロッパーとして1番のプレイヤーです。建築設計の段階で、動物の日常の行動を意識しながら、使用素材、道具、間取りなどを考慮した上で物件の設計をします。
例えば、ベランダからペットが落ちない仕様のフェンスが導入されていたり、入居者のペットは、健康診断証明書とワクチン接種済み証明書を取らなければならないという制度も導入したりしています。さらに、手軽な価格のコンドミニアムから、ラグジュアリーのコンドミニアムまで、すべてのお客様のニーズに合わせて、様々なセグメントのコンドミニアムを開発しているので、近年では更に人気が高まっています。
Origin Property Company Limited
Origin Property Company Limitedは、2021年のCOVID19の感染拡大をきっかけにして、ペット大好きな人、いわゆる「ペットラバー」向けのコンドミニアムの開発・販売に力を入れてきました。Y世代、Z世代をターゲットに、交通の利便性が高いながらも、手軽な価格のペットフレンドリーなコンドミニアムを、様々なところで開発しています。同社の物件は非常に大人気で、売り出した後に短時間でソールドアウトする物件も多いようです。
今後のタイのペットヒューマニゼーショントレンドとビジネスチャンス
タイではCOIVD19の広がったことと、高齢化社会の進行が理由で、ペットヒューマニゼーションのトレンドが早いスピードで広がっています。さらに、不動産デベロッパーもペットフレンドリーの物件を積極的に開発するようになったため、ペットを飼いたい人にとって障壁となっていたペットを飼える物件が少ない、という問題が解決されつつあることも、ペットヒューマニゼーションのトレンド拡大に拍車をかけています。
ビジネスの面でも。自動餌やり機やペットセキュリティーシステム、ペットのいる家庭向けの自動化システムのような不動産テック(Proptech)の市場も今後の拡大が期待されます。