こんにちは。アジア・アライアンス・パートナーの辻です。
一年中温暖な気候のタイでは日本のような四季はありませんが、1年を大きく分けて11月~2月の乾季、3月~5月の暑季、6月~10月の雨季の3つの季節に分けることができます。雨がほどんと降らない乾季と暑季は観光的にもハイシーズンとなりますが、一方で空気が乾燥して風があまり吹かないことから、近年では大気汚染が深刻な社会問題となっています。
今回はタイのPM2.5問題についてお伝えします。
タイにおける微小粒子状物質(PM2.5)の現状
タイの天然資源・環境省公害管理局(PCD)によると、微小粒子状物質(PM2.5)のタイ全土の多くの地域で、PM2.5が基準値を超えているとされています。3月9日の発表では、バンコクと近隣県のPM2.5の濃度は1立方メートル当たり50~110マイクログラムとなり、健康に害を与えるレベルでした。また、南部以外の各地域のPM2.5濃度も健康に害を与えるレベルでしたが、タイの北部および東北部では、この時期、山火事の発生や農村部の野焼きなどによる影響により、PM2.5の濃度が最も深刻な状態になっています。
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PM2.5の発生源
バンコクのPM2.5の主な発生源は、自動車の排気ガス(54%)、野焼き(35%)、工場からの排煙及び建設現場からの粉塵(11%)とみられています。一方で、北部や東北部など地方のPM2.5の主要な発生源は山火事や野焼きによるものと考えられています。
下の表はタイ天然資源環境省国立公園野生動植物局(DNP)によるホットスポット(野焼きや山火事が発生しているとみられる高温の場所)に関する情報で、2022年10月1日から2023年3月9日まで約5か月間に76,377カ所のホットスポットが確認されました。ホットスポットの発生数が多い県上位10県を見てみると、ほぼタイの北部に集中していることがわかります。さらに、タイの北部が国境を接しているミャンマーやラオス側の国境付近でも多くのホットスポットが発生しており、タイ国内の対策だけでは状況が改善できず、問題解決をより難しくしています。
県名 | 地方 | 森林保護地域 | 国有林野地域内 | 森林保護・国有林野以外 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
カンチャナブリ | 中部 | 5,758 | 1,170 | 1,874 | 8,802 |
ターク | 中北部 | 3,202 | 2,121 | 709 | 6,032 |
チェンマイ | 北部 | 2,155 | 1,403 | 158 | 3,716 |
ランパーン | 北部 | 1,118 | 2,128 | 465 | 3,711 |
チャイヤプーム | 東北 | 1,495 | 375 | 1,547 | 3,417 |
ナーン | 北部 | 1,482 | 1,579 | 310 | 3,371 |
ウッタラディット | 中北部 | 1,647 | 566 | 733 | 2,946 |
ペッチャブーン | 中北部 | 527 | 741 | 1,425 | 2,693 |
チェンライ | 北部 | 360 | 1,135 | 731 | 2,226 |
ナコーンサワン | 中北部 | 277 | 63 | 1,875 | 2,215 |
(2022年10月1日から2023年3月9日まで)
タイ政府が掲げる対策
2019年、タイ政府はPM2.5の問題を国家的な課題として発表し、野焼き禁止や、黒煙車検知、ディーゼル車の使用抑制など、PM2.5対策を講じてきました。また、タイ政府は2023年に「粉じんによる大気汚染解決のための応急計画」作成し、以下の具体的な対策をすすめています。
- Facebook、TikTokなどSNSチャンネルを活用し、大気汚染情報に関する積極的な広報活動
- 大気汚染管理の厳格化や大気汚染対策の推進(工場排煙の管理、自動車排出ガスの監視など)
- 包括的な燃料管理
- 粉じんによる大気汚染状況の継続的に監視・実施・評価及び規制違反者への罰則の厳格化。また、市民が最新情報にアクセスするための広報プラットフォームの整備。
- ホットスポット(野焼きや山火事が発生しているとみられる高温の場所)発生数の抑制、火災危険度予測システムの開発・導入
- 越境煙霧問題を防止・解決するため、隣国との国際協力の強化
- 煙霧・山火事・粉じんの問題を解決するため、関係各部門の連携強化
上記のように政府は対策を講じていますが、北部を代表する都市チェンマイでは3月下旬に空気質指数(AQI)が三日続けて世界最悪を記録するなど、状況は改善されていません。チェンマイ県の隣のチェンライ県では、3月中旬に呼吸器系の外来患者が一週間で3,000人を超えたと報じられており、健康被害も広がっています。
![Picture1](https://aap-jpromo.com/wp-content/uploads/2023/04/Picture1.jpg)
例年では雨季に入る5月下旬ごろからAQIが下がるため、あと2か月もすれば状況が改善されるものと思われますが、来シーズンは乾季入りする前からしっかりとした対策を始めて、大気汚染問題が今年以上に悪化しないことを望みます。