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タイにおける世界の半導体産業の将来と次の一歩


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タイにおける世界の半導体産業の将来と次の一歩

こんにちは。アジア・アライアンス・パートナーのグラフです。

 現在の世界的な半導体不足危機は、最初は電気自動車業界だけに影響を及ぼしていましたが、その衝撃はスマートフォン、タブレット、コンピューター、ゲーム機器、さまざまなIoT機器にまで広がっています

 半導体不足危機は、世界市場での半導体の需要が急速に高まっているため、短期間で終わる可能性は低いと思われます。タイの半導体産業における立場と、タイにおける半導体産業のビジネスチャンスについてお話ししたいと思います。
 

半導体産業の現状

 半導体産業は需要と供給のアンバランスに直面しており、デジタル経済への移行による需要の急増と、サプライチェーンの問題が深刻です。米中の技術戦争、コロナウイルス感染症の世界的大流行、ロシアとウクライナの紛争などが原因でサプライチェーンが混乱し、原材料価格が上昇しています。需要と供給の不均衡は生産量の回復である部分改善されていますが、世界経済の回復に伴い需要が再び増加する傾向にあるため、サプライチェーンは引き続き多くのリスクに直面している状況です。今後も半導体の世界的な需要と供給のバランスに注目する必要があります。
 

タイは世界の半導体サプライチェーンでどの位置に立つのでしょう

 地政学的な対立から生じる世界のサプライチェーンの変化が、タイへの半導体生産拠点の一部移転を促し、国内の半導体部品生産業界への投資を促進しています。アメリカが中国からの半導体関連製品の輸入を減らし、ASEAN諸国からの輸入を始めたため、その比率は全輸入の約42%に達しています。タイからの輸入も含まれており、タイからアメリカ市場への半導体関連製品の輸出額が増加していることが反映されています。アメリカでも毎年、半導体産業への投資拡大の傾向と一致しています。また、電気自動車産業や電子産業など、世界市場および国内市場での半導体需要の増加と、将来のサプライチェーンの問題に対する懸念が、製造業者による中国からの生産拠点の移転とASEAN諸国への投資探求の大きな動機となっています。

 SCB EIC(SCB Economic Intelligence Center)※1は、タイの半導体産業が将来的に、フロントエンドやより複雑なバックエンド※2の生産者へと発展する可能性が高いと予測しています。外国からの投資拡大とBOI(タイ投資委員会)の支援策によって後押しされている状況です。現在、タイの半導体企業の約70%が外資系企業で構成されており、これらの企業はチップパッケージング※3、ウエハー※4の切断(Dicing process)、チップ組立などのサービスに注力しています。主な外資系企業にはアメリカのマイクロンやマキシム、オランダのNXP、日本のソニーや東芝、韓国のKEC、シンガポールのUTACなどがあります。タイの半導体産業は原材料および技術の輸入に依存しており、ベトナムやインドと同様のレベルに位置しています。現在、タイ国内の半導体企業12社が、従来のチップパッケージングサービスから、よりアップストリームの生産プロセスへと投資を拡大し始めており、ソニー、東芝、KECなどがその例として挙げられます。
 

ウエハー
  • ※1:SCB Economic Intelligence Center (SCB EIC) はタイのサイアム商業銀行の下部組織です。マクロ経済に関する深い分析データを提供し、産業部門への影響について経営者に情報を提供することで、効果的な意思決定をサポートするために設立されました。
  • ※2:「フロントエンド」は、シリコンウエハーにトランジスタ層を形成するまでの工程、「バックエンド」は多層配線層を形成するまでの工程です。
  • ※3:「チップパッケージング」とは、半導体チップを搭載する電子機器に適した形態にするプロセス。
  • ※4:「ウエハー」とは、ICチップ(半導体集積回路)の材料となる、半導体物質の結晶でできた円形の薄い板。
     

 将来的にタイは半導体産業において、より高いレベルのサプライチェーンへと進化する可能性があるとされています。マレーシアと同等の複雑なチップのパッケージング、組み立て、テスト(バックエンドプロセス)ができるようになり。また、中国の10ナノメートル以上の半導体チップ製造技術レベルと並び、シリコンウエハー(フロントエンドプロセス)の生産プロセスの開発も進んでいます。タイは長年にわたりプリント基板、半導体デバイスなどなど、世界市場で重要な電子部品組み立て基地としての地位を築き、ASEANの競合国に対して優位に立っている上、インフラ面でも優れています。 

 現在、マレーシアにはIntel(アメリカ)、AT&S(オーストリア)、ASE(台湾)などの外資系大企業が進出し、半導体サプライチェーンの一部となっています。国家の政策やBOIの半導体製造部門のインセンティブ増加により、タイも同様に、電子部品製造業界での半導体サプライチェーン関連の開発を行い、大手投資家からの関心を引いています。インセンティブの対象はウエハーの製造、半導体部品の製造など、サプライチェーン全体をカバーしています。さらに、世界の電子部品サプライチェーンの生産基地の移動により、外資系投資家がタイの半導体産業に投資しており、フロントエンド(日本/韓国)、バックエンドのチップパッケージングサービス(アメリカ)、半導体関連産業(台湾/中国)が進出しています。2023年上半期のBOIデータによると、電気機器および電子機器への投資促進プロジェクトの大部分が外資系で、総額約107,688億バーツに達し、その中には半導体デバイスや集積回路の製造・テストに関連する5つのプロジェクトが含まれ、総投資額の約12%に相当する12,957億バーツが投資されています。
 

半導体および関連産業向けの恩典パッケージ
出典:BOI

最後に

 今後、タイの半導体産業の拡大と、世界市場での半導体部品の需要増加に伴い、タイの半導体部品の輸出額が増大するでしょう。特に、タイでは電気自動車産業や電子産業など、半導体部品が重要なコンポーネントである産業が拡大しており、半導体の需要がさらに高くなります。加えて、国家の政策やBOIの半導体製造部門のインセンティブ増加により、タイ進出ご検討の半導体関連産業にとって、かなり魅力的な国になると言えそうです。
 



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