HOME > ビジネスニュース > サスティナブルな生産拠点を目指す在タイ大手日系企業の組織運営の事例

サスティナブルな生産拠点を目指す在タイ大手日系企業の組織運営の事例


ビジネスニュース

サスティナブルな生産拠点を目指す在タイ大手日系企業の組織運営の事例

 こんにちは。アジア・アライアンス・パートナーのタイ人スタッフ、ニンです。 

 5月15日から18日開催されたサブコンタイランド2023の中で、「持続可能な産業生産拠点を目指すために企業の組織を動かす」 というセミナーが開かれました。同セミナーでは、日産タイランドや、サイアムクボタコーポレーション、三菱電機など在タイ大手日系企業が、持続可能な産業生産拠点を目指すために組織を動かす事例をプレゼンしました。

 天然資源、環境やテクノロジーなど様々な問題や変化に直面する世界の中で、多くの企業は環境への悪影響を最小限に抑えつつ、エネルギーや天然資源を最大限に活用する製品の製造に重点を置いています。

 今回は、そのセミナーの内容を踏まえ、タイに拠点を置く大手日系企業が、どのようにサスティナブルな組織運営をしているか、という具体的な事例を企業別にご紹介いたします。

日産タイランド 「NISSAN MOTOR (THAILAND) CO., LTD.」

企業概要

 日産タイランドはタイで70年以上の歴史があります。同社では、電動車である日産キックスe-POWERを含むピックアップトラックや乗用車の生産拠点として、日本を含む世界約200カ所に製品を輸出しています。また、日産タイランドではR&D (研究開発)センターを有しており、90 カ国以上に向けグローバルな R&D テストセンターとして機能しています。さらに、日産タイランドは、日本国外初の e-Power バッテリー組立地でもあります。

サスティナブルな組織運営の事例:

  1. 適正なゴミ分別(Waste Separation)
     ゴミの分別が日本ほど徹底されていないタイにおいて、リサイクル可能ゴミ、一般ゴミ、生ゴミ、有害ゴミなど、適正なゴミ分別を推進しています。リサイクル可能ゴミは、再び利用できるようにリサイクル処理をします。また、リサイクルできないゴミは、できるだけ燃焼量を減らす、及び大気中への温室効果ガスの排出を減らすために、適正な方法で処理されます。
  2. 排水をゼロにするために水リサイクル(Water Recycling and Zero Water Discharge)
     2014年に、小型商用車の製造工場である第2工場における排水処理水のリサイクルシステムの運用が開始されました。製造工程から出る排水を処理した水を効率的に再利用するために、工場内における水リサイクルシステム(Recycle Reverse Osmosis System)を使用しています。このシステムにより、1日あたり300㎥以上の水をリサイクルすることができます。
  3. 工場内での植樹プロジェクト(Tree Planting Project)
     同社がサムットプラーカーン県に持つ工場内で、900本以上の植樹を行いました。これにより、年間937トンの空気中の二酸化炭素および1,311kgのPM2.5の吸収をすることができます。またこの活動は、工場内で継続して行われています。
  4. 太陽電池パネル設置プロジェクト (Solar rooftop project)
     同社の社屋および工場の屋根に60,000㎡以上の太陽光パネルの設置し、最大5.5メガワットの発電可能な設備を設置しました。この太陽光パネルによる発電した電気は、工場の運営に使用されています。また、太陽光パネルの導入により、年間 約5,100 トンの二酸化炭素の排出を減らすことができます。
     この大規模な太陽光発電システムの導入により、タイ日産自動車は、自動車業界において、最も太陽光エネルギーを活用している企業となっています。

サイアム・クボタ・コーポレーション 「SIAM KUBOTA CORPORATION CO., LTD.」

企業概要

 サイアム・クボタ・コーポレーションは、クボタとタイ・サイアム・セメント・グループの合弁企業であり、2010年に設立されました。

 サイアム・クボタ・ コーポレーションでは、社会および環境に配慮するとともに、持続可能なビジネス (Sustainable Business) 化のための事業運営を行っています。サイアム・クボタ・コーポレーションは、タイ農家を数年に渡って支援しているため、農業に関する知識を持っており、そのノウハウを活かした、農業機械の新たなイノベーションに取り組んでいます。

サスティナブルな組織運営の事例

  1. 野焼き0プロジェクト (Zero Burn)
     タイでは、稲、とうもろこし、サトウキビなど主要な農作物から、年間に約6,700万トンの農業残渣が発生しています。
     サイアム・クボタ・コーポレーションでは、可能な限り農業残渣を活用するために、政府機関などとの連携により野焼き0プロジェクト (Zero Burn) を立ち上げました。同プロジェクトでは、野焼きの代わりに農業機械の活用を支援しています。また、農家に土壌の整備から、栽培、管理、収穫まで総合農業(Kubota Agri Solutions)に関する知識を共有しています。
     タイ国内で75,000ライ(120,000,000平方メートル)以上の農地面積を有する7県でこのプロジェクトが実施され、農業残渣物を活用することで収入を得る農家も出ています。また、この7県におけるホットスポット(野焼きや山火事が発生しているとみられる高温の場所)数が減少するなどプロジェクトによる効果が生まれています。
  2. 農業のモデル地域を作りプロジェクト(Siam Kubota Community Enterprise: SKCE)
     Siam Kubota Community Enterprise: SKCEと呼ばれるこのプロジェクトは、持続可能な農業を実現するためのモデル地域づくりを行うプロジェクトです。これまで、サイアム・クボタ・コーポレーションは、タイ国内の6県7ヵ所にこのモデル地域を作りました。今後も更に農業のモデル地域を拡大し続けるという目標もあります。
     サイアム・クボタ・コーポレーションの農業のモデル地域内ではクボタグループの製品や技術、農業やマーケティングのノウハウ、スマート農業によって農家をサポートしています。また、コスト削減や収穫量の増加、農産物の付加価値の創出を課題にコミュニティの運営をしています。
  3. 農業機械の学習プロジェクト
     Kubota and Farmer Cooperation(KFC)プロジェクトは、地域の農家の方が農業機械へのアクセスをし易い環境を整えるために立ち上げられたプロジェクトです。このプロジェクトでは、地方の農業コミュニティで使用する農業機械について学び・管理できるように学習の場を提供しているプロジェクトです。
     このプロジェクトは、すでにタイ国内59県に168ヵ所で承認されています。

最後に

 近年、SDGsの影響もあり企業の運営における「持続可能性又はサスティナビリティ(Sustainability)」 の重要性が高まっています。上述の通り、刻一刻と変わっていく世界情勢の中で、サスティナビリティとどのように向き合っていくか、というのは企業の皆様にとって大きな課題ではないでしょうか。

 今回の日産タイランドとサイアム・クボタ・コーポレーションの2社の講演を聞き、持続可能なビジネス運営について真剣に考えるよい機会となりました。



当サイトでは、お客様により適したサービスを提供するため、クッキーを利用しています。お客様には、クッキーを許可するかを選択する権利があります。クッキー許可の選択については クッキーの設定 に進んでください。詳細は、当社の クッキーポリシーを確認してください。

プライバシー設定

お客様には、必須クッキーは選択を解除することはできませんが、必須クッキー以外のクッキーを許可するかを選択する権利があります。

Allow All
同意設定
  • 常にオン

保存