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コロナショックから回復を目指すタイの観光業界


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コロナショックから回復を目指すタイの観光業界

こんにちは。アジア・アライアンス・パートナーの辻です。

 タイは観光産業がGDPの20%ほどを占め、コロナ前の2019年には海外からの観光収入が600億ドルを超えて世界第4位となるなど、タイ経済を支える大きな柱となっています。そんな観光大国のタイも、2020年初旬からの新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって大きな打撃を受けましたが、2021年11月から段階的に入国規制を緩和し、2022年7月に入国申請システムを撤廃して以降は外国からの観光客が順調に回復し、2023年6月の外国人観光客数は2019年同月の約7割にまで回復をしました。今回はコロナショックから回復しつつあるタイの観光業界についてお伝えします。

コロナ前までのタイの観光業界の状況

 一年中温暖な気候で、美味しいタイ料理やきれいな海・山などの自然という豊富な観光資源に恵まれたタイは、ロシアやヨーロッパの観光客から冬の寒さから逃れる「避寒地」として人気がありました。また、比較的安い物価や移動時間の短さなどから、日本をはじめ、韓国や香港など同じアジア域内からの観光客にも人気が高い観光地でした。特に中国人観光客からの人気は高く、国内の急激な経済発展と共に中国人観光客の数も激増しました。

出典:タイ観光・スポーツ省

 このグラフは、コロナ前10年間のタイの外国人観光客数と観光収入の推移を表したものです。クーデターが発生した2014年を除いて10年間ずっと右肩上がりで増加が続き、2010年と2019年を比較すると、外国人観光客数で約2.5倍、観光収入で約3.2倍もの規模に拡大をしました。その大きな要因として考えられるのは、先ほども述べた通り中国人観光客の増加が挙げられます。順調な経済成長を背景に、2000年代後半から海外へ旅行に行く中国人が増え始め、比較的物価が安いタイは特に人気が高く、またタイで撮影された中国映画「ロスト・イン・タイランド」のロケ地としても人気を博しました。

国別観光客数トップ10

2010年2019年
順位国名人数割合順位国名人数割合
1マレーシア2,047,17512.8%1中国11,138,65827.9%
2中国1,132,2677.1%2マレーシア4,274,45810.7%
3日本980,4246.2%3インド1,961,0694.9%
4韓国805,1795.1%4韓国1,880,4654.7%
5英国760,2494.8%5ラオス1,856,7624.7%
6インド746,2144.7%6日本1,787,1854.5%
7ラオス718,3774.5%7ロシア1,481,8373.7%
8オーストラリア702,9214.4%8シンガポール1,150,0242.9%
9シンガポール654,3424.1%9米国1,136,2102.8%
10ロシア643,8394.0%10香港1,090,1212.7%
出典:タイ観光・スポーツ省

 上の表は2010年と2019年の国別観光客数のトップ10を、人数と外国人観光客数全体に占める割合を示したものです。全体的に増加している傾向にありますが、中国はこの10年間で約10倍まで増加して1位となり、外国人観光客全体に占める割合も27.9%と非常に高い割合を占めるまでになりました。その一方で、中国人観光客のマナーなどの問題も浮上し、破格のツアー料金で中国人経営のホテルや土産物店などを中心にまわる「ゼロ元ツアー(ゼロドルツアー)」では、地元民の手元にお金が落ちないなど、受け入れるタイ側から不満の声も上がっていましたが、それでも増え続ける中国人観光客の影響力は大きく、各観光地には中国語の看板が多くみられるようになりました。

コロナショックを乗り越えて

 2019年に4000万人に迫っていたタイの外国人観光客数ですが、2020年4月にロックダウン(都市封鎖)を宣言し、海外からの入国を厳しく制限した影響で2020年の観光客数は670万人まで大きく減少し、2021年には41万人とコロナ前の2019年と比べて100分の1にまで落ち込んでしまいました。2020年の経済成長率は前年比-6.2%と1998年のアジア通貨危機以来の大幅なマイナス成長となり、タイ経済は大きな打撃を受けました。観光業界も深刻な状況に陥りましたが、外国人観光客の受け入れが厳しく制限されている中、タイ政府は日本の「Go To Travel キャンペーン」や「全国旅行支援」のような国内旅行の支援策を次々と打ち出し、地方の観光産業を支えるべくタイ人の国内旅行の振興に注力しました。

 世界的にコロナワクチンの接種が進んだ2021年10月、ワクチンの規定回数接種やPCR検査陰性などを条件とした「タイランドパス」の制度を発表し、強制隔離なしでの外国人観光客の受け入れを再開しました。その後、段階的に入国条件の緩和が進み、2022年7月には「タイランドパス」の制度を廃止、2023年1月にはワクチン接種やPCR検査陰性の証明も不要となり、条件なしでの入国が可能となりました。時を同じくして中国でも2023年1月にゼロコロナ政策を撤廃したため、再び多くの中国人観光客がタイを訪れるようになりました。

出典:タイ観光・スポーツ省

 このグラフはコロナ前の2019年と今年2023年の月別の外国人観光客数を比較したものです。こうしてみるとまだ完全にコロナ前の状況に戻ったとは言えませんが、それでも各月6割~7割ほどに回復していることがわかります。今後、さらなる回復を目指すタイ政府観光庁は、中国人観光客向けのキャンペーンの実施や、観光客に大きな影響力を持つインフルエンサーを招いた大規模な視察ツアーなどを開催し、中国観光客の回復に特に力を入れています。

2019年上半期2023年上半期
順位国名人数割合順位国名人数割合
1中国5,650,47428.6%1マレーシア2,104,71416.3%
2マレーシア1,930,0279.8%2中国1,443,11911.2%
3インド978,7855.0%3ロシア791,5746.1%
4韓国907,3874.6%4韓国763,0795.9%
5ラオス886,3414.5%5インド761,4635.9%
6日本864,3794.4%6ベトナム509,7433.9%
7ロシア825,5564.2%7シンガポール471,4933.7%
8米国595,2263.0%8米国458,3373.5%
9ベトナム525,6872.7%9ラオス408,4103.2%
10英国504,7542.6%10英国403,0563.1%
15日本327,0412.5%
出典:タイ観光・スポーツ省

 今年2023年上半期の国別観光客数を2019年上半期と比べてみると、ほとんどの国が1割~2割程度の減で推移していますが、中国は4分の1程度とまだまだ回復の余地が大いにあることがわかります。先ほども述べましたが、タイ政府観光庁は中国人観光客の受け入れに力を注いでおり、2023年末までに500万人の中国人観光客の受け入れを目標としています。一方で日本人観光客の数は2019年と比べて半分以下に減少して国別順位でも15位まで落ち込んでおり、残念ながらタイ国内での日本人観光客の存在感は低下していると言わざるを得ません。

そんな中、先日とあるニュースが報じられ、在タイ日本人の間でも話題になりました。タイ観光・スポーツ省と日本政府観光局(JNTO)が発表した情報によると、2023年上半期の訪日タイ人観光客数は49万7700人となり、訪タイ日本人観光客数の32万7041人を上回って初めて対日観光赤字となりました。その要因としては大幅な円安により日本人が海外旅行へ行き難くなっていることが考えられますが、依然としてタイ人の日本旅行の人気は高く、大手クレジットカード会社が行った「タイ人が行きたい海外旅行先」の調査によると、日本は81%で1位となり、2位の韓国(52%)、3位のニュージーランド(43%)を大きく引き離す結果となっています。今後もタイから多くの観光客が日本を訪れることと思いますが、当オフィスでもタイ人向けに島根県の観光情報の発信などのサポートを行っております。ご興味をお持ちの方はぜひ当オフィスまでご連絡ください。


鳥取県東南アジアビューロー、岡山県タイビジネスサポートデスクの業務を担当。趣味はドライブ、自転車、映画鑑賞。タイ在住歴20年。

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