1990年代から日系企業の進出が急速に進み、進出企業数・在留邦人数ともに上位をキープしているタイは、大の親日国としても知られており、日系企業にとってビジネスがしやすい国としてさまざまな環境が整っています。特にBOI(タイ投資委員会)による新規進出企業への投資優遇策(法人税や輸入関税の免除など)により、今まで多くの外国企業を呼び込むことに成功しています。
ASEANの中で経済的にも立地的にも中心的役割を担っているタイは、中所得国から脱却し、産業を高度化させることを目指して、長期的経済ビジョン「タイランド4.0」を掲げています。「タイランド4.0」では、短期~中期的なターゲット産業として①次世代自動車②スマート電子機器③高付加価値の観光・メディカルツーリズム④効率的な農業・バイオテクノロジー⑤将来のための食料の5つの既存産業分野、長期的なターゲット産業として①自動機械・産業用ロボット②航空宇宙③バイオ燃料・バイオ科学④デジタル産業⑤医療・健康産業の5つの新規産業分野の、合計10産業を成長に導くニューエンジンとして重点を置いています。そしてこの政策ビジョンの中核となるのが、EEC(Eastern
Economic
Corridor:東部経済回廊)構想で、自動車産業の集積地である東部3県(チョンブリー県、チャチュンサオ県、ラヨーン県)を特区に指定し、大規模なインフラ基盤整備と先端産業誘致が進められています。その他にも、国際社会の潮流に合わせた新たな製作として、「バイオ・循環型・グリーン(BCG)経済モデル」をかかげ、クリーンエネルギー、電気自動車(EV)、スマートエレクトロニクス、デジタルウェルネスと医療など、様々な未来の産業への投資恩典を設定しています。
このような産業の高度化を目指す一方で、少子高齢化が社会問題化しつつあり、今後は日本を上回る速度で超高齢化が進むとみられています。日本と違って介護保険制度がなく、介護サービスなどもまだ普及していませんが、言い換えると、今後高齢者向け事業の市場が拡大する可能性を秘めています。
タイはインドシナ半島の中央部に位置しており、東はカンボジア、西はミャンマー、北はラオス、南はマレーシアと国境を接しています。日本と比べて約1.4倍の国土に約半分の人口が暮らしています。
タイ人の多くは敬虔な仏教徒であることが知られており、現代でも出家の制度があったり、毎朝托鉢の光景を目にすることができるなど、人々の生活に深く密着しています。
世界でも屈指の観光立国として知られるタイですが、中でもバンコクは世界渡航先ランキング(マスターカード発表)で2016年~2019年の4年連続で1位を記録しており、高架鉄道や地下鉄のインフラが整備されるなど近代都市化が進められています。その一方で、地方にはまだ多くの自然が残されていて、北部のチェンマイには過ごしやすい山の気候や伝統的文化、南部のプーケット島やサムイ島には美しい海を求めて多くの外国人観光客が訪れます。
新型コロナウイルスの影響により、海外からの観光客が激減して今いましたが、2022年10月からは入国措置が撤廃され、陰性証明の提示などが不要になりました。今後、外国人観光客が増え、観光産業が再び盛り上がる日を待つばかりです。
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タイ王国 Kingdom of Thailand |
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51万3,115平方キロメートル(日本の約1.4倍) |
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6,617万人(2021年、出所:タイ国内務省) |
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バンコク(タイ語名:クルンテープ・マハナコーン) 人口567万人(2020年、出所:タイ国内務省) |
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大多数がタイ族。その他 華人、マレー族等 |
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タイ語 |
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人口の約95%が上座部仏教、その他イスラム教(4%)、キリスト教(0.6%)など |
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-2時間 |
タイの政治体制は日本と同じく立憲君主制(国家元首は国王)で、議院内閣制を採用しています。1900年代前半からクーデターが繰り返され、近年でも2014年に発生したクーデターによって軍事政権が樹立されましたが、その後2019年に選挙が行われ、民政復帰を遂げています。
「軍事政権」というと物々しいイメージをもたれるかもしれませんが、一般的にイメージされるような強権的な独裁政治ではなく(言論統制などの非民主的な規制はありますが)、国民の中には容認する声も少なくありません。特に2014年のクーデターが発生する以前は、2001年~2006年に首相を務めたタクシン氏を支持するタクシン派(北部、東北部が地盤。シンボルカラーは赤)と、反タクシン派(バンコク、南部が地盤。シンボルカラーは黄色)の対立が激化し、バンコク市内ではデモ会場付近で爆発や銃撃事件が発生して死傷者が出るなど治安も悪化するなど、国民の不安は増すばかりでしたが、無血クーデターで軍部が政権を握ることにより、一時的ではありますが政治的混乱を収めたという一面もあります。
2019年3月に8年ぶりとなる下院総選挙が行われ、民政復帰を果たしていますが、2020年10月ごろから「憲法改正」「王室改革」を訴えるデモが断続的に行われていますので、渡航の際には必ず最新情報を確認することを忘れないでください。
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立憲君主国 |
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マハー・ワチラロンコン・プラ・ワチラクラチャオユーフア国王 King Maha Vajiralongkorn Phra Vajiraklaochaoyuhua(2016年12月1日即位、1952年7月28日生まれ) |
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二院制 上院は250議席、発足年2019、任期5年(任命) 下院は500議席、発足年2019、任期4年(公選) |
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首相のもと首相府、19省ほか プラユット・ジャンオーチャー首相(2014年9月~) |
近年のタイの経済を振り返ると、1990年以降、3度の大きな経済危機に見舞われています。1997年にタイから始まったアジア通貨危機では大打撃を受け、翌1998年の経済成長率はマイナス10%まで落ち込みますが1999年にはプラスに回復、世界金融危機の影響を受けた2009年にマイナス成長となった時にも2010年には7.8%のV字回復、2011年に発生した大洪水では多くの工場・農場が被災して甚大な被害が出ましたが、翌年には自動車生産台数が過去最高を記録するなど、困難な状況を乗り越えてきました。
2020年に世界的に感染が拡大した新型コロナウイルスの影響によってタイ経済も大きな打撃を受けていますが、タイの製造業の主要産業である自動車産業はアジア向けの輸出が2021年にはV字回復を示し、少しずつですが回復の兆しが見えてきています。もう一つの主要産業である観光においても2022年10月の入国措置の撤廃以降、外国人観光客の数は順調に増加しており、今後の景気回復への明るい要素とも言えます。
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項目 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | データ出所 |
名目GDP(十億ドル) | 456.523 | 506.403 | 544.027 | 499.75 | 505.902 | IMF | |
一人当たりの 名目GDP(ドル) |
6595.224 | 7295.952 | 7813.605 | 7159.743 | 7232.256 | IMF | |
GDP成長率 | 4.2% | 4.2% | 2.2% | -6.1% | 1.5% | IMF | |
失業率(平均) | 1.2% | 1.1% | 1.0% | 2.0% | 1.5% | IMF | |
輸出額 |
233,688 (百万ドル) |
251,108 (百万ドル) |
242,701 (百万ドル) |
226,984 (百万ドル) |
270,564 (百万ドル) |
タイ中央銀行 | |
対日輸出額 |
22,067 (百万ドル) |
24,937 (百万ドル) |
24,524 (百万ドル) |
22,808 (百万ドル) |
24,995 (百万ドル) |
タイ中央銀行 | |
輸入額 |
201,107 (百万ドル) |
228,720 (百万ドル) |
215,976 (百万ドル) |
186,128 (百万ドル) |
230,679 (百万ドル) |
タイ中央銀行 | |
対日輸入額 |
32,054 (百万ドル) |
35,256 (百万ドル) |
33,197 (百万ドル) |
27,686 (百万ドル) |
35,654 (百万ドル) |
タイ中央銀行 | |
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輸出:自動車、自動車部品、電子機器、電子機器部品 輸入:機械、機械部品、原油、金蔵 (2020年) |
タイ商務省 | |||||
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輸出:1.米国(15.5%) 2.中国(13.8%) 3.日本(9.2%) 輸入:1.中国(24.9%) 2.日本(13.4%) 3.米国(5.4%) (2021年) |
タイ中央銀行のデータから算出 | |||||
(単位:百万ドル) |
1位:日本 73,503(26.2%)2位:中国 47,599(17.0%)3位:米国 34,184(12.2%)4位:シンガポール 28,126(10.0%) 5位:台湾 18,027(6.4%) (タイ投資委員会認可ベース 2021年) |
タイ投資委員会 | |||||
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バーツ(Baht) | - | |||||
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1ドル=31.16バーツ(2021年平均値) | - | |||||
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5,856社(2020年10月~2021年3月、ジェトロバンコク事務所調べ) | - | |||||
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82,574人(2021年10月外務省「海外在留邦人数調査統計」より) | - |