インドネシアに進出する日系企業は1489社(JETROジャカルタ調べ 2019年)といわれ、進出時期は2011~2015年が469社で最多、その後2016~2019年は62社にとどまり、進出ラッシュはひと段落しています。推察するにその理由の一つとしては外資企業が進出する際のハードルの高さがあります。外資進出に際してはネガティブリストという外資進出規制業種の存在と外資企業に対する最低資本金100億ルピア(約7000万円)という条件があります。そのため中小企業の進出の難易度はASEANの中でも高いと言えます。
一方産業政策としては「インダストリー4.0」(第4次産業革命)の実現に向けたロードマップ「メイキング・インドネシア4.0」(2018年4月4日発表)を掲げ、ロードマップの中ではインドネシアが「2030年にデジタル産業の時代に入るための準備」として「インダストリー4.0」への適応を優先的に進めるモデル分野として、食品および飲料、テキスタイルおよびアパレル、自動車、化学、電器の5分野を挙げています。現職のジョコ大統領は2030年までに世界トップ10にランクインすることを目標に掲げており(2019年4月インドネシアGDPランキングは世界17位)、さらなる外資誘致施策が加速すると予想されています。
その一端を担うのは2020年に施行されたオムニバス法(雇用創出法)です。投資禁止業種は20業種から6業種に減少し、投資手続きの簡素化などが図られました。しかし最低資本額などには変更がなかったため、引き続き中小企業の進出難易度は他のASEAN諸国と比較して高いと言えますが、日本の2倍以上の人口を抱える魅力的な消費市場ともいえるので、中長期的な視野で環境変化を注視する必要があります。
インドネシアは13,000を超える島々からなる世界最大の島国です。人口も2.67億人と世界4位の人口を誇り、その平均年齢は です。生産年齢人口(15-64歳)が従属人口(14歳以下、65歳以上)の2倍以上となる人口ボーナス期は日本は1995年に終了してしまいましたが、インドネシアは2030年まで続くといわれており、市場としての魅力も備えています。
人口の内、約88%がイスラム教を信仰しているといわれます。イスラム教は日常生活に関わり合いのある戒律も多く、主なものとしては1日5回のお祈り(明け方、午前中、午後、日没後、就寝前にメッカに向かってお祈りをしなければならない。また男性のみ、金曜日の12時に礼拝がある。)、ラマダン時期の断食(1年に1度、4週間断食が行われる。この期間日の出から日没まで、一切飲食ができない。)など、ビジネスを行う上で理解しておく必要があるものも存在しています。また、イスラム教以外にもヒンズー教、キリスト教、仏教、儒教などを信仰する方々がいます。
民族も宗教と同じく多様な民族が暮らし、「多様性の中の統一(Bhinneka Tunggal Ika)」のスローガンの下、各民族の独自な文化や伝統の継承を認め、どの民族も対等な立場で扱われるべきという多文化主義を採用している国でもあります。
国・地域名 | インドネシア共和国 Republic of Indonesia |
面積 | 191万6,907平方キロメートル(2019年、日本の約5倍)) |
人口 | 約2.7億人(2020年、インドネシア政府統計) |
首都 | ジャカルタ(人口1,056万人:2020年、インドネシア政府統計) |
民族 | 大半がマレー系(ジャワ、スンダ等約300種族) |
言語 | インドネシア語 |
宗教 | イスラム教 86.69%、キリスト教 10.72%(プロテスタント 7.6%、カトリック 3.12%)、ヒンズー教 1.74%、仏教 0.77%、儒教 0.03%、その他 0.04% (2019年、宗教省統計) |
日本との時差 | -2時間 |
インドネシアの政治体制は大統領制で、現職のジョコ・ウィドト大統領は2019年に再選され、5年任期の2期目に入っています。2019年10月の就任時演説では2045年のインドネシアの姿として以下の4つの方針を伝えました。
1.「中所得のわな」から脱出する
2. 1人あたりGDP(年間)が3.2億ルピア(約22,400ドル) または(月間)2,700万ルピア(約1,890ドル)を達成する
3. 名目GDPを7兆ドルとし、世界の5大経済国に入る
4. 国民の貧困率をゼロとする
この実現に向けて、任期中の大きな政策のひとつは首都移転です。コロナの影響で当初の計画からは遅れていますが、2022年1月に国会で首都移転法案が可決され、2024年にはジャワ島西部のジャカルタから東カリマンタン(カリマンタン島東部)に移転を開始、新首都の名称はジャワ語で群島を意味する「ヌサンタラ」となることが正式に決まりました。完全な首都移転はインドネシア独立100年となる2045年を目指しています
新首都は、政治の中心となり、経済は引き続きジャカルタが中心になる見通しです。首都移転の主な理由は世界一ひどいといわれる交通渋滞の解消、現首都ジャワ島とその他の島の間で経済格差を広げずインドネシア全体的な発展を目指す、地下水の汲み上げと水をリサイクルできていないことが原因とした地盤沈下と温暖化による海面上昇の影響を受けたジャカルタ水没の危機の回避などがあげられます。
政体 | 大統領制、共和制 |
元首 | ジョコ・ウィドド大統領(2019年10月20日に再任、任期5年。) |
議会制度 | 国会(DPR)(定数575名、任期5年)、国民協議会(MPR)(定数711名、国会議員575名と地方代表議員136名で構成) |
行政府 | 内閣は大統領の補佐機関であり、大統領が国務大臣の任免権を有する。 政治・治安担当調整大臣府管轄の5省と州政府、経済担当調整大臣府管轄の10省4府、社会福祉担当調整大臣府管轄の5省6府など。 |
インドネシアは各種天然資源を豊富に有し、巨大な消費地であることから、有望な市場と注目を集めています。一人あたりGDPはASEANにおいて中位ですが、名目GDPはASEAN経済の4割を占めています。
1990年代前半まで、直接投資が労働集約型の製造業を中心に活発化し、輸出型製造業が高成長の源 でした。アジア通貨危機以降、周辺国と比べて投資環境上の障害が大きいとみられるインドネシアへの外国直接投資の低迷等を
背景に、輸出型製造業は伸び悩みました。
産業構造において、豊富な天然資源を背景に外貨を獲得してきた為、天然資源の相場価格に依存した経済構造となっており、今後は資源輸出依存型経済からの脱却が求められています。
基本的経済指標 | 項目 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | データ出所 |
名目GDP(十億ドル) | 1015.488 | 1042.711 | 1119.452 | 1062.164 | 1187.319 | IMF | |
一人当たりの 名目GDP(ドル) |
3885.465 | 3947.248 | 4194.086 | 3930.973 | 4361.16 | IMF | |
GDP成長率 | 5.1% | 5.2% | 5.0% | -2.1% | 3.7% | IMF | |
失業率(平均) | 5.5% | 5.2% | 5.2% | 7.1% | 6.5% | IMF | |
輸出額 |
167,640 (百万ドル) |
180,215 (百万ドル) |
167,683 (百万ドル) |
163,192 (百万ドル) |
231,522 (百万ドル) |
インドネシア中央統計庁 | |
対日輸出額 |
17,491 (百万ドル) |
19,480 (百万ドル) |
16,003 (百万ドル) |
13,665 (百万ドル) |
17,855 (百万ドル) |
インドネシア中央統計庁 | |
輸入額 |
156,925 (百万ドル) |
187,917 (百万ドル) |
170,727 (百万ドル) |
141,569 (百万ドル) |
196,190 (百万ドル) |
インドネシア中央統計庁 | |
対日輸入額 |
15,241 (百万ドル) |
17,878 (百万ドル) |
15,662 (百万ドル) |
10,672 (百万ドル) |
14,644 (百万ドル) |
インドネシア中央統計庁 | |
主要貿易品目 |
輸出:鉱物性燃料、動物・植物性油脂等、鉄鋼 輸入:機械、機械設備、鉄鋼、医療用品 |
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主要貿易相手国 |
輸出:1.中国(22.1%) 2.米国(11.1%) 3.日本(7.2%) 輸入:1.中国(28.4%) 2.日本(7.5%) 3.タイ(4.6%) (2021年) |
インドネシア中央統計庁 | |||||
外国からの直接投資 (単位:百万ドル) |
1位:シンガポール 9,390(30.2%)2位:香港 4,609(14.8%)3位:中国 3,160(10.2%)4位:米国 2,537(8.2%)5位:日本 2,263(7.3%) (インドネシア投資省 実行ベース 2019年) |
インドネシア投資省 | |||||
通貨 | ルピア(Rp) | - | |||||
為替レート | 1ドル=14,345ルピア(2021年平均値) | - | |||||
日系企業数 | 1,959社(2020年10月、外務省 「海外進出日系企業拠点数調査」より) | - | |||||
在留邦人 | 16,539人(2021年10月外務省「海外在留邦人数調査統計」より) | - |